ダンスとエロティシズム2006/03/21 21:00

 ダンスアタックを見ていて漠然と思っていたことが突然分かった。それは以前服装選びの話でも書いたことに繋がることである。
 ダンス部で指導していると、ガールズやレゲエなどのように、より「女らしさ」を追究したスタイルのダンスを踊りたい高校生がよくいる。彼女らのやりたいことは、ひとことで言えば「力強くてエロかわいい」ダンス。そういう作品を見たときの彼女らの感想は「いやらしくなくてかっこいい」。一方で、世間一般では「エロティクなものというのは、女が男に媚びて、自らを貶めて、男を誘惑するときに発するシグナル」といった意味合いがあるようである。この発想自体は前近代的なものであると思うのだが、しかし多数派の意見であることも事実であると思う。

したがって高校で、エロティックな表現を高校生がするのを黙認したり、ましてやその方法を教えるというのは、「教育的によろしくない」ということになるのである。本人たちはかっこいいスタイルを追及して短いスカートをはくのだが、教員はそれを長くしろと指導する。これもその流れということになる。もちろん「ルールは守るものである」という意味合いもあるのだけど。
 いずれにしても多くの高校のダンス部で、文化祭の時のステージ衣装に対する生徒と教員とのズレがあるのはこのようなところに原因がある。
 ところが、自分が自分らしくあること、自分を自分らしく表現してそれを認められることというのは、人間としての自然な欲求であるばかりか、基本的人権といってもいいはずである。
 では、「エロかわいい」表現はどうなのか。

実は部活の指導をする時に、特にそういう制限をしていない。むしろよりセクシーさを表現するにはどうすればいいかを追究している。だってそのことが自信につながるし、だいたい、そういうときの彼女らはとても生き生き踊っているから。その生き生きと踊っていることをダンスアタックのいくつかの作品を見て思い出したのである。

「今回のダンスは何を表現したいの?力強さ?かわいさ?かよわさ?セクシーさ?エロさ?たくましさ?…」。作品を創り始める時に必ずこういうことを聞く。「自分の何を見せたいの?自分をどういう人間だと見て欲しいの?」。そのような問から次第に作品イメージが出来上がっていくのであるが、このとき、では「セクシーさ」や「エロさ」を見せたいと考える時、それは具体的にはどのようなイメージなのだろうか。
 それは、女らしい体つき、しなやかな動き、胸や腰や足などのボディラインなどであって、決して男に媚びることや自らを貶めることではない。もしそれが自らを貶めることになるのであれば、自分の体はそんなにマズイものなのかと自己否定することになるのだが、そういうイメージではない。

そうではなく自己肯定である。女らしい体をしていることを肯定する、それだけのことである。「私の体つきを否定しないで、私は私よ、何が悪いの」という声が聞こえてきそうなくらいポジティブである。男子ならブレイクの力強い技を見せたり、筋肉自慢をしたりするのと同じことだと思う。だから彼女らの踊りを見ても目線や動きは全然媚びていなくて、とても堂々としている。それを見て、誘惑されたような誤解をする男性や、誘惑しようとしていると誤解して批判する女性は、悲しいかな少なくないだろう。
 でもダンスの教育には、自己肯定、自己表現、異なる自分の発見、など現代の教育現場に必要でありながら欠けがちな要素が数多くあるのだ、それをみすみす放棄することはないのである。
 で、今回ここまで話の構造が見えてきたのには、一冊の本との出会いがあったからである。それは中村うさぎの「私という病」である。数日前から読み始めてダンスアタックに移動中の電車で読み終えたので、ちょうど重なったのであった。詳しく書くと長くなるので省略するが、この中に書かれている「コスプレ効果」と同様の意味合いがダンスを踊るということにはあるのだろうと思うのである。

てわけで今回たくさん書いちゃいました。
 これからも男に媚びないセクシーなダンスを追及していきたいですが、それならそれで問題がないわけではない。それは、男性が大胆な女性のダンスを見たときに、生理的な欲情と現実の恋愛や人間関係とをいかにして区別するか、というトレーニングが必要という話であるが、その話はいずれまた(以上2006/03/22)。

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