ダンスとコトバ2005/05/16 23:56

 ダンスと聞いて何を思い浮かべるかは人により様々です。「ダンスをやっています」と言うと、大抵の人は「どんなダンスですか?」と質問してくるのですが、これはダンスというもののイメージが色々あるからだと思います。
 「Shall we dance?」を観た人は社交ダンスを想像するだろうし、テレビの歌番組を普段見ている人はジャズやヒップホップを想像するかもしれません。
 一口にダンスと言っても、バレエ、モダンダンス、コンテンポラリーダンス、ジャズダンス、ストリートダンス、クラブでのフリーサークルやサークルバトル、盆踊り、パラパラ、トランス、民族舞踊、日本舞踊、社交ダンス、タンゴ、フラダンス、サンバ、サルサ、フォークダンス、チアリーディング、シンクロナイズドスイミング…など実にいろいろあります。

 ダンスの定義は人により様々ですが、僕自身が考えているダンスの条件はとても広いもので、次の三つの条件を満たすものです。
 ・体の動きで表現されること…最初から最後までまったく体を動かさないで終わってしまうというのはダンスではないでしょう。
 ・他人(一緒に踊る人または観ている人)との間で何らかの「伝える」という要素があること…一人で誰にも見せず自分の部屋の中で踊って、誰にも見せないまま満足してしまうとすれば、それはエクササイズやトレーニングであって、ダンスではないと思います。
 ・何らかのリズム(時間的な制約)の元に行われるもの…大抵は音楽がかかっている中で体を動かすのですが、時にまったく無音で踊る場合もあります。そういう時でも、何らかのリズムにしたがっていなければ、パントマイムか無言劇か何かになってしまいます。
 言葉は未整理ですが、ダンスとはこういうものだと思います。
 
 そこであらためて「ダンスとは何か?」と考えてみたら、それは「コトバ」というのと同じくらい広い概念だということがわかります。ダンスはコミュニケーションや表現の手段で「コトバ」に匹敵するくらいの色々な応用ができます。「コトバ」でできることは、雑談、講演・主張・体験談、冗談、告白、しりとりなどのコトバ遊びなど様々です。もし仮に「喋るのが仕事です」という人がいたとしたら、どんなことを喋るのだろうかと気になりますが、ダンスの場合もそれくらい広い概念だからこそ「どんなダンスですか?」と聞くことになるのだと思います。

 ここに挙げたダンスをコトバと対応させてみると、観る人に何らかの表現をする作品としてのダンス(バレエ・モダンダンス・ストリートダンス・日本舞踊・シンクロナイズドスイミング…)は講演・主張・体験談、一緒に踊る人との共同意識を高めるためのダンス(盆踊り、パラパラ、フォークダンス…)は色々なコトバ遊び、集団によるコミュニケーションとしてのダンス(クラブでのフリーサークル…)は雑談、男女のコミュニケーションとしてのダンス(社交ダンス・サルサ…)は告白などに相当することがわかります。

 そう考えると、ダンスがうまくなるには二つのことがあると思います。
 一つ目はコトバで言えば語彙力を高めることです。つまりは体の動きのバリエーションを増やすということだと思います。バレエやストリートダンスのように、ある程度動き方のルールが決まっているダンスをする場合は、正しい動き方を身につけることから始めなくてはなりません。
 二つ目は表現したり伝えたりしたいという意識を持つことです。語彙力がなくても表現したいことがあれば伝わるのと同様に、動きのバリエーションが少なくても伝えたい、表現したいという気持ちがあれば生き生きと踊っているように見えるものです。逆にどんなに語彙力があって発音がきれいでも、伝える気持ちがなければ棒読みのようになるのと同様に、動きのバリエーションが多くても伝える気持ちがこもっていなければ、身体能力の凄さしか伝わらないでしょう。

 こうして考えれば考えるほど、ダンスというのはコトバに匹敵することなのだと思います。この話は「チンパンジー」の「ディスプレー」や鳥の求愛行動の時に行われるコミュニケーションの話にも関連してくるのですが、それはまたいずれ。

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